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  • 執筆者の写真鈴木良太

「Daddy Killer」第二十二話「目撃者」。

僕は甲板で無事に井戸沢さんのスマホを海に投げ捨てることができ、満足感でいっぱいだった。


「ああ。気持ちのいい夜風。目的を達成していくのって楽しいな。」


僕は幸せな気持ちだった。


山下という悪いおじさんをやっつけた直後でもあるからだ。


「ホントに悪いおじさん。若い子をたくさん食べてきたんだろうな。奥さんに怒られてホントいい気味。離婚でもなんでもすればいい。奥さんお願いだから慰謝料がっぽり取ってください。」


すると、後ろから一人のおじさんが近づいてきた。


「君はなんてことをしたんだ。」


「えっ。」


振り返ると、50代くらいのおじさんがいた。


たしか僕の泊まっている部屋のとなりに泊まっているおじさん。


僕は覚えている。


見た目はすごく好みだからだ。


小太りで短髪で目がぱっちりしていること。


服装もしっかりしており、清潔感もある。


社会的地位も高い方だとわかる。


そんな方がなぜ。


「どうしたんですか?」


「僕は見ていたんだ。君とおじさんがああいうことをしているところを。」


「ああいうことってなんですか?」


「・・・。それを奥さんに言ったんだろ?それがどういうことかわかっているのか?」


「すみません。よくわかりません。はっきり言っていただかないとわかりません。ハアハア。それになんか暑いですね。僕の部屋に行って涼しみましょう。」


このおじさんの言いたいことは全部わかっている。


おじさんの魂胆も。


でもね、おじさん。


あなたの目を見れば、わかったんだ。


興味があったんだろ?


僕に。


だから僕を観察していたんだろ?


僕が山下とそういうことをしている時も覗いていたんだろ?


スケベなオヤジだ。


全くお仕置きをしてあげなくちゃ。


若い男が好きで好きで仕方がないって感じかな。


結婚しているのは、薬指の指輪でバレバレだ。


ホントしょうもないおじさんが多い。


僕はいいよ。


たくさん制裁を加えるだけ。


このおじさんの快楽と苦しみ。


ああ。


みたいみたい。


早く。


僕はこのおじさんを僕の部屋に連れ込んだ。


「涼しいところで難しい話をしましょう。ちょっと難しい話になりそうですもんね。ああ暑い暑い。」


僕は上のシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になった。


おじさんの目は僕の裸の上半身に釘付けだ。


「ちょっといきなり何を!!」


「あっ。ごめんなさい。暑かったらつい。でも男同士だから気にならないでしょ?」


そう言いながら、僕はズボンも脱ぎ捨てた。


僕のイチモツはパンツ越しからでもわかるほど大きくもっこりしていた。


おじさんの視線はそこに集中している。


「暑いからこれも取っていいですか?僕とおんなじものがあるので平気ですよね?」


おじさんは何も言わない。


こんなはずじゃなかった。


とでも思っているのか。


期待していたくせに。


僕と山下のことを問い詰めた後、あわよくばと思っていただろ?


あさはかな欲望。


いいだろう。


叶えてやる。


乗ってやる。


だが、その代償はつく。


それだけのこと。


僕はパンツを脱ぎ、パンツのニオイを嗅いだ。


「わっ。汗臭い。」


そのパンツをそのおじさんに投げつけた。


「興味がお有りでしたら、あげます。」


全身裸になった僕はおじさんの体に引っ付いた。


「暑くないんですか。良ければ、脱ぐのお手伝いさせていただきます。」


おじさんは最初硬直していたが、衣服の下半身を脱がせた時豹変した。


たまったうっぷんを晴らすかのように僕をベッドに連れていき、僕の体中を貪りつくした。


それからは激しかった。


圧倒的、欲情。


僕が果ててもおじさんが果てても、まだ尽きない。


どんどん出てくる。


体の芯から。


エロが溢れてくる。


求め合っている。


お互いを。


あれ?


この感覚。


懐かしい。


いや、あの人と同じ。


やってもやっても足りない。


あの感じ。


ああ。

好き。


大好き。


井戸沢さん。


まだ名前も知らないこのおじさん。


なんてなんて、体の相性がいいんだ。


すごい。


すごいよ。


窓から外を見ると、もう明るくなってきている。


何時間やっていたんだ。


さすがにおじさんはとうとう眠ってしまったようだ。


僕も久しぶりに楽しめた。


どうしよう。


このおじさんが目覚めたら、またやりたい。


ああダメダメ。


このジジイには制裁を加えるのだ。


僕以外の若者をさぞ苦しめているに違いない。


「ああ。若い男大好き。若い子に囲まれて死にたい。」


って思っているはず。


だったら殺してあげよう。


社会的に。


僕はこのおじさんの衣服を漁りだした。


おじさんの財布から個人情報を確かめるためである。


おそらく大きな会社に勤める人だと思う。


そんな人がこのようなスキャンダル。


考えただけでもテンションが上がる。


僕は財布の中の名刺を探した。


何枚も同じ名刺があったらこの人本人のはずだ。


どれどれ。


あっ。見つけた。


たぶんこれだ。


京都府議会議員?


ってことは政治家?


政治家がこんなことやばくないか?


えーこの人の転落人生が目に見えている。


僕がスキャンダルをばら撒くと、支持者が減るだろうな。


次の選挙で落選かな。


えーと、名前は、いとざわ。


井戸沢!?


まさかの井戸沢さん。


ここにもいたか、井戸沢さん。


面白すぎる。


同姓同名。


この井戸沢さんとあの井戸沢さん。


ヤバイ。


共通点がある。


体の相性が良いこと。


目がパッチリしているところ。


何回もできること。


性欲が強いこと。


よし、こいつを第二の井戸沢に任命する。


今回、このおじさんは一人で船に乗ってるみたいだから、奥さんは一緒じゃない。


じゃあ日本に帰ったら奥さんと世間に知らしめてあげなくちゃね。


このおじさんが若い男の子が大好きで大好きでたまらないってことを。


えっ。


悪いことじゃないでしょ。


本当のことなんだから。


隠してらダメでしょ。


本当に自分をさらけ出してください。


僕は良いことしている。


っと思った瞬間、僕は急に目眩がしてベッドに倒れ込んだ。


気を失ってしまった。


夜に頑張り過ぎてしまったからなのだろうか。


頭の中にモヤが湧いてくる。


中学生、いや高校生くらいの二人の少年が僕の頭の中に出てきた。


どうやらその二人は兄弟らしい。

兄と弟。


兄は弟にちょっかいをかけた。


性的な悪戯を。


弟の性器で遊んだのだ。


自分の性器をつかませたりもした。


それ以上のプレイも要求した。


父や母のいる前では普通の兄弟。


夜になって、寝ているときにそれは起きる。


兄が弟の部屋に行ってそれを行う。


弟はそれらの行為に対して兄に質問することはなかった。


もちろん親にも内緒だった。


兄が高校卒業するまで、その関係は続いた。


兄が地方の大学に進学して家を出てからはそういうこともなくなった。


しかし、帰省して家に帰ってくる時は、また関係が始まった。


弟は複雑な気持ちだった。


嬉しさと罪悪感、悲しさ、快楽が入り混じるような感情。


兄弟同士だから、気持ちを出してはいけない。


兄も自分もいずれは結婚するからだ。


兄は大学を卒業し、父親の会社に入らず、大手企業に就職した。


5年ほどその会社で働き、それからは父親の会社に入った。


父親の会社に入って程なくして、結婚した。


兄は結婚したが、親戚同士の集まりなので、実家に集まるときは弟に手を出していた。


数年経って、弟も結婚した。


それでも、弟に手を出してくる兄についに怒りが爆発した。


絶縁。


溜まりにたまったものだろうか。


こんなことで絶縁。


いや、他人の心の傷は自分では測れない。


絶縁の理由は愛憎。


兄のそれを求めていた自分が許せない。


結婚もして、子どももいるのに。


ゲイの趣向がある自分が許せない。


だから、弟はゲイの活動を最近までしていなかった。


50代になるまで。


性的対象は20~30代の男。


若い子が好きなようだ。


井戸沢兄弟。


二人揃って同じ性的趣向とは。


この二人兄弟だったんだ。


死んだ井戸沢さんが僕の夢の中で教えてくれたのかもしれない。


つづく。




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